学生時代、メキシコに旅をしました。
街角の両替商でドルからペソに替えると、当時1ドルが800ペソぐらいかと記憶する。
では、800ペソで何が買えるのか。
それほど高くないレストランでディナーを食べて一人500ペソくらいだった思います。
何を買っても信じられないほどの安さに驚いた。
しかし、それが今、この日本がその舞台となり、多くの外国人が信じられない安さに感動している。
あいにくコロナでインバウンド観光客は見かけないが、日本に群がる理由は「安さ」なのだ。
日本は90年代のバブル崩壊以来、モノの価格は据え置かれ、賃金も据え置かれ、デフレが骨の髄までしみ込んで、そのことすら感じられないほど値引き合戦に浮かれ、気が付けば世界の最貧国に肩を並べるほどになってしまった。
この本は、その現状を様々なデータで紹介する、いとも淡々とした内容だが、それが意味する現実はあまりにも絶望的だ。
この日本の現状を生んだ原因はいくつかあるが、大きく3つあると言える。
1.今だ続く年功序列型賃金体系による企業側の賃金抑制。
大企業に依然として存在する労働組合による一律賃金引上げ交渉という行為の継続が、優秀な人材の流出へつな
がり賃金が抑制されていても我慢する人が雇用される現状となっている。
国民の3割の熱狂的な支持者により政治を決められるならば、十分な票である。
2.輸出産業を守るための日銀による円安誘導に対して企業が賃金で報いて来なかった。
輸出産業の賃金を上げるための円安誘導が、輸出産業がその収益を海外投資や内部留保に使ってしまったことに
より国内にお金が回らない事態を作ってしまった。
円安は輸入に頼る我が国にとっては原材料の高騰につながる。しかし、デフレの影響でそれを価格に転嫁できな
い企業は人件費を削り(非正規雇用を増やす)価格維持をしてきた。
3.いつの間にか陥った労働生産性の低さ。
日本は物価が上がらない上に賃金も上がらない。
そのため時間当たりの労働生産性も年々他の国に追い越されてしまっている。
ドイツ車と日本車の価格の差を見ればその意味が分かる。
ベンツはトヨタと品質的には変わらないが価格には差がある。
ドイツ人は日本人よりも短時間(労働時間)で価格の高い商品を生み出している。
世界水準で見れば、これが現実なのだ。
この状況を打破するにはどうすれば良いのか・・・。
政治が作った30年間のツケは容易に返すことは困難だ。
これから様々な観点からその答えを見つけて行きたいと思います。