松本市の郊外、浅間温泉に新たな名所ができたので行ってみた。雑誌「自游人」の編集長が老舗旅館を買い取り、新たな発想で蘇らせたと聞いたので行ってみた。浅間温泉郷は各旅館が団体客を囲い込むことで温泉街が衰退し、今はその旅館が衰退することで町全体がかつての賑わいを失っている。この「松本十帖」が新たな風を吹かせることができるか大きな賭けでもある。
「泊まれる本屋さん」と言うべきか。松本十帖の一角にある「松本本箱」に入ってみる。
かつての老舗旅館の1階が誰でも入れるブックカフェになっている。セレクトされたこだわりの本が誰でも手に取れる仕組みはリゾナーレ小淵沢にもあるが、ここはさらに奥が深かった。
靴をぬいで絨毯が敷き詰められた廊下を進み地下へ降りるとそこに「こども本箱」と暖簾がかかった場所がある。潜ってみると大人が自由に通れないように迷路のように置かれた本箱に絵本がたくさん。その先には無数のボールに満たされた湯舟が・・。そうここは温泉の浴槽そのものです。
2階へも同じように進むと今度は「おとなの本箱」の暖簾が・・。大浴場だった空間を本棚が囲い、湯舟のクッションにもたれながら本を手に取る。時の経つのを忘れてしまいそうな豊かな空間でした。
目的の違う施設を複合的に組み合わせて新たな価値やコンセプトを生む方法は、これからの少子高齢化時代の効果的な公共施設の運用に何かヒントになるのではと思います。